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IYC支援隊が東日本大震災被災地の岩手県を訪問しました。(2018年9月14-15日)

IYC記念全国協議会では、9月14日(木)~15日(金)の2日間、12団体の職員22名がIYC支援隊として岩手県内の東日本大震災の被災地等を訪問し、復興の取り組みと復興に向けた課題等を学ぶ視察交流を行いました。
 この取り組みは、「震災復興に向けての協同組合活動」をテーマに開催された2013年7月の第91回国際協同組合デー記念中央集会において、東日本大震災の復旧・復興に向け、協同組合全国組織等が協力して実施できる具体策を協議し、相互に協力して実践・行動する旨の申し合わせを行ったことを受け、その具体策の一環として2014年度から実施しているもので、協同組合の復興の取り組みを学び交流することを目的としています。
 5回目を迎えた今年の支援隊は、岩手県の協同組合間連携組織である岩手県協同組合間提携協議会にご協力いただき企画・実施しました。

1日目:釜石市→上閉伊郡大槌町→宮古市

釜石地方森林組合

19日は釜石駅近くに前泊し、20日、朝から最初の視察先である「釜石地方森林組合」へ向かいました。釜石地方森林組合の管内は標高800m~1300mの急峻な山々に囲まれ、総面積の約9割が森林で占められています。また5ヘクタール未満の小規模な所有者が半数を占めるという特徴があります。釜石地方森林組合は震災前から「組合員第一主義」を掲げ、林業先進国のヨーロッパを参考に、「組合員への所得還元」と共に、森林を川を守り海を育む「環境資産」としてとらえ、その価値向上のため「山の診断書」を作成し、小規模所有者を取りまとめ一括してその管理を受託してこられました。2007年には、この提案型集約化・森林経営計画の確実な実施が認められ、全国のモデル組合に選定されていました。
 しかし2011年、津波で釜石市内にあった事務所(本所)は流失し、尊い役職員の命までも失いました。高橋参事からは「一旦は存続をあきらめ解散を決意した。しかし、残された職員全員と亡くなられた役職員のご遺族から経営の復旧の要請を受け、さらに、組合員からは所有する森林資産の提供の申し出をいただき、すべての協同組合全国組織からも支援をいただいた。皆様のおかげで、釜石地方森林組合は復旧に向けたスタートラインに立たせていただいた」とお話がありました。IYC支援隊は、久保組合長、高橋参事から日本の林業の歴史、森林組合の事業、日本の林業の今日的課題について教えていただき、さらに釜石地方森林組合の復興支援の6つの目標とその事業について詳しくご説明いただきました。釜石地方森林組合はこれらの取り組みが評価され、2017年度第4回ディスカバー農山漁村の宝 特別賞、プロデュース賞を受賞されています。

目標 森林による復興支援 6つの目標 (紹介いただいた具体的事業)
1 森林による雇用の拡大
(釜石・大槌バークレイズ林業スクールと若手職員の採用・山火事復旧作業・機械化の推進と安全な職場環境の整備・女性、高齢者の活躍推進、障害者雇用の拡大)
2 命を守り・繋ぐ作業路の開設
(地権者集約による大規模作業林道の整備・車いすでも避難できる作業路の整備・間伐による保全)
3 森林体験・視察受け入れによる交流人口の拡大・人材育成
(被災保育園への植樹ボランティア・環境教育の実施・企業研修としての植樹の実施)
4 再生可能エネルギーへの資源の提供
(バイオマス事業)
5 森林吸収減取引を利用した森林整備事業資金の確保
6 低コスト・良質な復興住宅・復興公営住宅の提案
(他業種との連携による木製品の開発、大量発注、地域内の受注対応)

なお、2016年に起こった釜石尾﨑白浜地区での大規模森林火災に対し、IYC記念協議会は協同組合国際デー中央集会で集めた募金を釜石地方森林組合へ贈呈。また、岩手県協同組合間提携協議会は2018年に加入団体の役職員で植樹活動を行うなど、ここでも協同組合が連携して取り組んでおられました。


釜石地方森林組合

森林組合の高橋参事から説明を聞く支援隊
JAいわて花巻「母ちゃんハウスだぁすこ※1  沿岸店」

続いて訪問した「母ちゃんハウスだぁすこ」は大槌町が農林水産省の補助金を活用して2015年に建てた「大槌町沿岸営農拠点センター」内にありました。また、ここには、津波で流出し、その後仮設事務所で営業していたJAいわて花巻の「大槌支店」と「東部地区営農センター」も併設されていました。
 「母ちゃんハウスだぁすこ 」はJAいわて花巻が運営する大規模農産物直売所です。しかし、ここは農産物の単なる直売所だけでなく、地域農業の振興と地域住民のくらしの拠り所としての存在でもありました。
 大槌では、震災直後の2011年7月から農業法人「結ゆい」が仮設販売所を設け、直売と宅配事業に取り組んでいました。「だぁすこ沿岸店」の開店により、「結ゆい」の宅配事業は「だぁすこ」による移動販売に移管し、「大槌結ゆい」と改名し、農産物の生産活動に特化し現在も活動されています。この直売所の誕生により、JAいわて花巻は、「沿岸産直部会」を設立し、現在106名の会員が通年出荷用の作物栽培に取り組んでおられます。なお、直売所には約30名が年間を通して、常時出荷されているそうです。
 IYC支援隊は、震災による被害および震災後のJAによる支援活動の説明を受けた後、沿岸店の店内を見学。阿部店長から個別にも詳しい説明をいただきました。

※1 だぁすこの由来:宮澤賢治「種山ヶ原」に出てくる伝統芸能「鬼剣舞」の太鼓の音を表現した擬音「ダー、ダー、ダースコ、ダーダ」から名付けたそうです。


「だぁすこ沿岸店」店内
■だぁすこ沿岸店の移動販売
月曜から土曜日まで、1日5,6か所を11時~14時まで運行。
月~金は大槌町、土曜日は鵜住居方面を巡回している。
軽トラック1台で日販は3~10万円弱。職員2人体制で運営している。
取扱品目:生鮮農産物の他総菜も扱い、Aコープブランドの調味料や生活用品を販売。
訪問先:当初は仮設住宅を巡回していたが、現在は移動先へも希望に応じ柔軟に対応している。
地域共生ホーム ねまれや

「母ちゃんハウスだぁすこ」沿岸店の会議室に、ワーカーズコープ大槌地域福祉事業所の古澤前所長にお越しいただき、震災から現在までの大槌事業所の歩みについて、事業所、組合員、町(地域)の3つの側面からご説明いただきました。地域の団体と議論を重ねるごとに具体的な課題が出て、その中で生まれた「小学生の早期一時預かり事業」が、午後の視察先である地域共生ホーム「ねまれや」の原点になったこともお話しいただきました。「ねまれや」は現在、高齢者デイサービス、学童保育、日中一時支援、菓子製造を行っており、さらに子ども食堂、不登校生対象の居場所、災害公営住宅でのサロン活動など社会連帯活動の拠点ともなっていました。なお、「ねまれや」は2018年に完成した映画「Workers 被災地に起つ」でも登場します。


地域共生ホームねまれや

施設2階で説明を聞く支援隊
浄土ヶ浜

初日の視察を終え、宿泊地である「グリーンピア三陸宮古」へ向かう途中、支援隊は「浄土ヶ浜」に立ち寄りました。三陸復興国立公園・三陸ジオパークの中心に位置する浄土ヶ浜は、宮古の代表的な景勝地です。鋭くとがった白い流紋岩が林立し、一つ一つ違った表情を見せて海岸を彩ります。天気にも恵まれたおかげで、松の緑と岩肌の白、海の群青とのコントラストは大変美しかったです。浄土ヶ浜の地名は、天和年間(1681〜1684)に宮古山常安寺七世の霊鏡竜湖(1727年没)が、「さながら極楽浄土のごとし」と感嘆したことから名付けられたと言われています。支援隊のメンバーは、観光スポットの「青の洞窟」を見学したり、海岸でカモメと戯れたり、お土産を買うなどして、1時間ほど楽しく観光しました。

交流会

夕食を兼ねた交流会には、岩手県協同組合間提携協議会からJA岩手県中央会の佐々木部長、岩手県生協連の吉田専務、岩手県漁連の佐々木部長、田老町漁協の鳥居工場長の4人も駆けつけていただき、支援隊のメンバーと交流を図りました。なお、ワーカーズコープの中野理事から「出された食事は全て食べて、食品ロスを出さないようにしよう」と声掛けをいただき、歓談をしながら食事も残さず楽しみました。

2日目:宮古市田老地区→宮古市宮古→盛岡

田老漁業協同組合

田老町(たろうちょう)は、リアス式海岸の湾の奥に位置する小さな漁村です。過去、幾度も津波の被害を受けているため、総延長2.5kmにも及ぶ高さ10mの防潮堤を建設するなど、津波に対して強い街づくりを進めていましたが、2011年東日本大震災ではその防潮堤を越える大津波が発生し、多くの被害が出たところです。
 2日目は田老漁業協同組合を訪問し、小林組合長から津波で船も施設も地域のくらしさえ失った中から、残った組合員1人1人と話し合いながら復旧に取り組んできたことや復旧には、いわて生協をはじめ全国の生協や漁協から様々な支援があったことなどの報告を受けました。また、支援隊は鳥居工場長の案内で、特産品である「真崎わかめ」の加工場を見学し、衛生的な工場で塩蔵わかめが袋詰めされる過程を見学させていただきました。


田老漁業協同組合

特産品の真崎わかめの加工風景
震災遺構「たろう観光ホテル」

なお、支援隊は漁協のすぐそばにある震災遺構「たろう観光ホテル」にも立ち寄り、現地の語り部さんから震災当日の様子を実際の映像を見ながら説明を受け、30mを超える巨大津波の怖さと想定外の災害への備えについても考えました

3階まで津波で押し流された震災遺構たろう観光ホテルと語り部の話を真剣に聞く参加者

道の駅「たろう」農林中金と森林組合の連携

大津波で破壊された防潮堤と新たに建築されている強大な防潮堤を見学したのち、道の駅「たろう」で、宮古地方森林組合の中居参事から、農林中金が震災後、岩手、宮城、福島の3県で地域産材を活用したベンチやテーブル等の木製品を地元の森林組合と連携して製作し、道の駅や魚市場などの復興施設に無償で提供している事業について紹介いただきました。道の駅「たろう」では、観光案内所に宮古地方森林組合が制作し寄贈された棚やスタンド、ラウンドテーブル等、約190万円相当の製品が寄贈されていました。


道の駅たろう

宮古地方森林組合から寄贈されたパンフレットスタンド
いわて生活協同組合 マリンコープDORA

最後の訪問先のいわて生活協同組合は、震災以降「買い物支援」「生業(なりわい)づくり支援」「笑顔と元気を届ける活動」「震災を忘れない活動」の4つの柱で様々な支援活動を継続されています。訪問した「マリンコープDORA店」は「買い物支援」の一環として、無料の「買い物バス」を運行したり、移動店舗「にこちゃん号」の拠点でもありました。また、他県の生協と合同で「宮古復興応援生協まつり」を開催したり、地元の食べ物のよさを伝え、地産地消を推進するコーナーを売り場に設けるなど「生業づくり支援」にも取り組んでおられました。
 支援隊は濱田店長から、ご自身の災害発生直後から7日間の行動をその記録に基づきご説明をいただきました。組合員や職員の安全を守らなければならない立場と地域のライフラインとして、物品を提供するために危険な店内で部下とともに働かなければならないという、相反する2つの役目の間で、苦悩しながら対処した店長の行動をご自身から語っていただく貴重な経験になりました。また、いわて生協の福士復興支援活動担当(釜石)からは、「笑顔と元気を届ける活動」の事例として、被災され内陸部へ避難された方のために「内陸ふれあいサロン」を開催するなど、今も被災地に寄り添った支援活動を行っていることや現在のいわて生協の取り組みである防災学習会から「ポリ袋クッキング」や「ローリングストック」などの防災豆知識も教えていただきました。


いわて生協「マリンコープDORA店」正面入口にて。

岩手県生協連の吉田専務(右)の司会で、いわて生協の福士復興支援活動担当(左)と同マリンコープDORA店の濱田店長(中央)から説明をいただく。

今回の支援隊は、農林水の協同組合と生協そしてワーカーズという多様な協同組合の活動に触れる事ができました。その結果、各協同組合が地域と組合員のために一心に取り組んできたこれまでの過程と今日の新しい取り組みや協同組合間の協同による取り組み等に直に触れ、知ることができた有意義な機会になりました。
 また、他の分野の協同組合の職員と行動を共にすることで、いろいろな発見や交流が生まれた貴重な体験になったと思います。

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